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次世代がん治療(BNCT)の開発実用化 後編

筑波大学准教授 熊田博明さん

(2013年10月28日にラヂオつくばで放送した内容をもとにした記事です)

インタビューを音声で聞く

患者さんの負担の少ない治療を。“ 癌が治る街つくば ”を目指して。

Q「いばらき中性子医療研究センター」の施設の概要を教えていただけますか?

熊田先生

この施設は、中性子を使った次世代型の新しい癌放射線治療を行う研究施設です。建物自体は茨城県が持っていて、一部を筑波大学が借りて最先端の装置を開発してここに導入しています。数年以内にここで装置を完成させて実際の癌治療の臨床研究をここで開始する計画です。

Qこの治療は、がん細胞が周囲に細かく散っていたり、重要な部分にしみこんでいたりする場合に有効ということを伺いました。そして通常の放射線治療は30回ほどにわけて照射していたのが、BNCTでは照射は1回のみ、という点も画期的ですね。

熊田先生

そうですね。正常組織に対するダメージがないので一回で治療できます。普通の放射線治療が30回に分割して行われるのは、一気にドンと放射線を入れると正常組織も死んでしまうからです。放射線自体は正常組織と癌細胞の見分けはつきません。ところが、分割して少しずつ放射線を入れてやると正常組織が半分死ぬんですが、その中で生き返ってくる細胞がいます。少しずつその差を利用していくと、正常細胞は生き残って癌細胞は死ぬということが起こるので、一回の放射線の量は減らすと同時に回数を多くするのが普通の放射線治療です。BNCTの場合は中性子自体の影響がほとんどないので、一回に癌を殺すに十分な量を打ち込んでも正常組織は死なないので、一回で治療ができてしまいます。

東海村の原子炉で臨床研究を行っていた時には、患者さんが関西や岡山などから治療の前日に来て、一泊だけ近くの病院に泊まって、翌日原子炉で治療を受けたらその日のうちに新幹線に乗って自分の病院に帰ってしまえるぐらい患者さんへ負担がないんです。話がそれますが、BNCTはメディカルツーリズムにも向いていると言われています。普通の放射線治療だ2ヶ月ぐらい滞在していないといけないところBNCTの治療は短期間でできます。一回で治療が終わるので、外国からの患者さんも家族と一緒に一週間ぐらい滞在して、その間に診断や治療を受けて帰ることができます。

Q筑波大学ではすでに陽子線治療というのは長い間実績をあげていますけど、今後陽子線治療とBNCT治療とを絡めてどういった展開を考えていますか?

熊田先生

筑波大学は陽子線治療を持っているのにBNCTの研究開発を行っているのは、難治性の浸潤癌、再発癌、多発癌のような陽子線だけでは治せない癌というのがいっぱいあります。それに対しても治療できるツールを持つことによって、患者さんが筑波大学の病院に来たら最適な治療を受けることができます。いろいろな治療の武器を持つことによって患者さんに対して最適な治療法を一箇所で提供することができます。さらに、将来的にはBNCTと陽子線を組み合わせてより治療効果が高くて短期間で治療が完了するような新しい治療法も確立でき、両方行うことによって相乗効果が生まれるだとうと思っています。つくばに行って診てもらえば自分にあった最適な治療法が見つかって治療が受けられ、“癌が治る街”にできるのではないかと思います。

Qつくばの取り組みというのは、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構、日本原子力開発機構、など日本でも原子力関係のトップレベルの研究機関が共同で行っていますね。

熊田先生

このプロジェクトは放射線と加速器の専門家集団が近くにいる“つくば”だからできているんです。癌治療なのでどういう装置が必要か分かっている医者も加わり、医工連携のプロジェクトを組めているというのが我々のチームの最大の特徴だと思います。他の大学にも加速器や原子力だけの専門家というのはいると思いますが、BNCTを行っている医者もプロジェクトに参加しなければ、結局装置だけを作って医療にならないということが起こってしまうので、それぞれの分野の専門家が集まってスタートからゴールまで全部作ることができるチームというのはつくば、茨城だけの特徴です。

Q熊田先生は開発の中でどの部分を担当されているんですか?

熊田先生

私のもともとの専門は加速器ではなくて、治療のシュミレーションなんです。治療のためにどの方向から何分ぐらい中性子を照射させれば良いかというのを事前にシュミレーションで最適な状況を導きだします。そのシュミレーションのためのソフトウェア開発が僕のもともとの研究分野なんです。そのソフトウェアの開発も今行っていますが、現時点でのメインの仕事はこのプロジェクト全体のマネージメントです。加速器を開発するのに国から予算を取ってきたり、プロジェクト全体の工程管理だとか。どこに予算をどう使って、どの装置をどのタイミングで作っていくかというのを、加速器の専門家の先生たちと一緒にマネージメントをしています。

Q研究で大変だと思われるところはどんな点ですか?

熊田先生

以前は日本原子力開発機構にいましたが、筑波大学に移ってこの仕事専属でやれていて、好きなことをやれているので苦労だとは思っていません。大変なところは、プロジェクトのための予算確保です。特に加速器はとても高い装置なので。このようなプロジェクトだと普通は5年間で予算がいくらとでて、それをどう使っていくかなんですけど、我々の場合は一度に予算確保ができなくて毎年少しずつ予算を申請して獲得して、というのを繰り返しやっています。その予算を今年はどれだけどういう配分で使うかをマネージメントすることが大変なときは大変です。


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