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未来を変えるロボットスーツHAL®後編

筑波大学教授・サイバーダイン株式会社 代表取締役社長 CEO 山海嘉之さん

(2013年11月11日にラヂオつくばで放送した内容をもとにした記事です)

インタビューを音声で聞く

革新技術を社会的手段へ。
東京オリンピック&パラリンピックを通しての技術の向上。
追従型から未来開拓できる人材育成。

QHAL®は当初から、使用時の安全を最優先にして開発を進めていて、国際的な安全規格を取得した、ということでした。そして、ヨーロッパでは医療機器として販売するのに必要なCEマークを取得したとのことでしたが、これは今後日本国内でどのような影響を与えるとお考えでしょうか?

山海先生

ヨーロッパで中で医療機器としてのCEマーキングを取得したことによって、ヨーロッパ全域に対してHAL®は医療機器として認められ、自由に輸出したり販売できることになりました。実はこの意義は非常に大きく、お医者さんたちがこのHAL®を特定の領域の患者さんだけでなく、別の領域の患者さんの治療に適用拡大していくことができるようになりました。そうすると、臨床データがさらに積み上がっていき、放っておいても様々な領域の治療に広がっていきます。そしてそのデータや情報が学会などを通して世界中に流れると、日本でも論文に引用できたりするので、日本国内でもHAL®の展開がしやすくなってきます。日本で医療機器として申請する時には、そういったデータの参照も含めてやりやすくなります。

Qお話を伺っていますと、山海教授は常に数歩先を見据えて取り組んでいらっしゃるという印象です。
この先の、数年後のHAL®についてはどういったビジョンをお持ちでしょうか?

山海先生

これまでなかった革新技術がちゃんと社会に入っていくにはどういう手順を踏めばいいかということをまずいろいろ考えました。技術を“医療機器”にして、尚且つ保険適用にするプロセスも必要です。

どんなに素晴らしい技術でもそれがものすごく高くて、人々に使われない技術を作ったところでそれは研究開発をする人たちの自己満足になるわけです。そうではなくて、ちゃんと社会の中で役に立って、人に喜んでもらえるものを自分の人生を費やして仕上げていきたいと思いました。
そのために、私はユーザー(利用者)を2系統に分けて考えました。1つは専門家ユーザーで、これは医療従事者の方々です。もう1つは一般の個人ユーザーで、エンドユーザーです。
今は医療従事者の専門家ユーザーの段階です。専門家ユーザーはある程度体系的に利用者をみて、いろんなご意見を集約して評価していただける特徴があります。この情報によって基礎段階のものをさらに進化させ、基礎技術や効果効能を高めていきます。そして数年後には一部をエンドユーザーでも一般家庭の中でも使えるような水準にまで進化させることができると考えています。
その結果、広く社会で使える技術にしていくというのが私の数年後のチャレンジになると思います。

Q2020年の東京オリンピックやパラリンピックでも新しい試みを考えていらっしゃると伺いましたが、いかがでしょうか?

山海先生

2020年の東京オリンピックやパラリンピックでこういった技術を示していけないかという問い合わせがきています。例えば、開会式でこの技術を投入してデモンストレーションしたり、障害をお持ちの方も含めてキックオフしたりだとか。また、スイスからはパラリンピックでこういった技術を使って新たな競技を組み込めないか、というラブコールがきています。トップアスリートも障害をお持ちの方も一緒になってできるような、そのような場所をみんなが目指せるような技術になればいいと思っています。
実はそれを実現するためにたくさんの関連企業が、高度な技術のブラッシュアップに入っています。そのようにして、人も技術も進化する場が現れてくるのではないかと考えています。

Q山海教授は高いリスクにチャレンジして、実行し、実現されています。
後に続く人がこうした広いビジョン、折れない強いマインドを持つにはどうすればいいでしょうか?

山海先生

恐らく、明治以降に日本は早く諸外国の科学技術水準だとかに追いつこうとして、追いつき追い越せ型の人材育成に力をいれてきました。その結果、海外に既にあるものを見つけて、それを吸収するという能力に長けました。それは国内では一番かもれませんが、世界からみるといつも海外をフォローアップしている、追従型の人材育成ばかりしていたように思います。しかし、今は未来開拓型の人材育成に変えていかなければいけない。私たちの社会がこれから直面する様々な課題があり、どのように解決して、解決方法そのものを新しい産業として展開していくというようなビジョンで人材育成をする必要があります。尚且つ、大事なのは人や社会のために何が必要か、何を成すべきかということを自ら発想して行動できる人材ということです。夢や情熱だけではなく、人や社会を思いやる心を研究開発する人たちの心の中に組み込まれない限り、自ら発想していくというところに到達しないと思います。人間観、社会観や論理感をしっかり持って未来を開拓していくことに対して強い折れない心、むしろそれをわくわくして日々を過ごせるような人材育成が重要だと思います。


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